紅蓮のゆうび’s Diary

役に立つ、読みやすい、ように努めるただの日記。

7猫と少女

 

 

 

 

朝ニュースを見ると最近ここらへんで連続殺人が起きているらしい。

 

 

俺はそれを人ごとのように流す。

 

 

一時限目は眠くてかなわん。加えて最近は俄然寒い日が続く。

 

 

そして家を出て、階段を降りて塀をふと見た時のことであった。

 


猫がいる。ちょっと太めの白。

 


「あれからどうだ少年」

 


猫がしゃべった。

 

 

「ぎゃぁああ、猫が喋った!」

 


「まったく最近の人間は礼儀もしやんとは」

 


猫パンチ!!

 


急にとんでもないフォームで(全身をめっちゃ伸ばしながら) 顔面を殴られる

 


いってぇ!!

 

 

昨日殴られたところぃお!

 


近くの女の子に笑われる

 


「うっわぁ笑われたじゃないか…」

 


「まぁなんでもないならそれで良い、あの紙持っているんじゃろうな?」

 


「え? 髪?」

 


「紙じゃばかもん、机の上に置いてあったじゃろうが」

 


「え、ごめんなさい」

 


「これだから

 


「わーわーうぜぇうぜぇ 」

 


「なにおぅ!」

 


っふん、まあとにかく紙は常日頃から持っておけぃ、今すぐ取りにもどれぇい

 

 

えぇ、だって学校が・・・・・・

 


四の五の言わずいいからいけぃ!!

 


なによアイツーー猫のくせにぃ

 


「ねぇお兄さん」

 

「うわぁ! びっくりした」

 


笑いを隠そうともしない学生制服を着たお姉さん(メガネ付)

 

イリ高校のものと思われる

 

ってさっき俺の事を笑ってた人じゃん恥ずかしい・・・・・・

 


「っふふ! びっくりするのはこっちだよ、あれ。猫さんとおしゃべりしていたんですか、ププ」

 


最後に小ばかにしてくるように、まったく配慮を気にすることもなく聞いてくるジェーケー

 


・・・・・・いい度胸じゃないですか

 


「っぐぅ、そうですけど」

 


こりゃ百パー変人認定だ

 

 

まぁ言い訳も思いつかなかったしもういいや

通報されないことを祈るばかりである

 


「あっはは! やっぱりなんだ、なんか遠目でみてたら喋ってるからさ、つい見行っちゃったよ」

 


そしたら私にも会話の内容が聞こえてくるから不思議だよねぇ! となけなしのフォローを投げてくれるイリの女子高生

 


いい人だ

 


「私の友人とかも変ですけど、あなたもいっちゃってますね」

 

 

「そんなあなたはそんな相手によくしゃべりかける気になりましたね...」

 


呆れと感嘆の声が出てくる

 


難しい顔しながら「いやぁ確かに怖かったけど」とぼそりと呟く彼女

 


じゃぁ喋りかけるなよ物騒だな

俺が変ならその変に話しかけるアンタはどう考えても、もっと変だよ

 


「猫に殴られている人みかけたら笑っちゃって、その本人はいったいどんな人でどんな性格なのかなぁとか思ったら気になっちゃってっ」

 


お嬢さん、俺にはいいけどあんま男性に気になっちゃったテヘペロとか言わない方がいいよ

 


その好奇心は危険行為だ

 


「あそう」

 


適当に流す俺

 

実は「気になっちゃった」とか言われたから舞い上がっちゃったりしている

 


「それに私猫、好きなんだよね。お兄さんもきっと好きなんじゃないかな?」

 

 

「え? 別にそこまで」

 


どうしてそう思ったのか


「ほら、やっぱ――えぇぇ! だってあんなにしゃべっていたじゃん! 猫好きの人には悪い人はいないって言おうとしてたのに・・・・・・」

 

 

「いや悪いけど今日の一件であんまし好きになくなった」

 


そんなぁ――と悲壮な声を出す姉ちゃん。どっかの吸血鬼みたいに泣いたりはしない

 


「猫様かわいいじゃん! なんでそういう事いうのぉ」

 


気持ち一歩こちらへ踏み込んでくる姉ちゃん

 


「な、なぜそんなことを言ってはダメなのか・・・・・・」

 


ゆっくり後ずさりする俺

 


「実は私も結構一人でいる時は猫と喋っちゃったりするんだーとか共感してもらおうと思ってたのに」

 

 

「うわぁ」

 


近づいてきた目的はそれか

 


「ちょっとドン引きしないでよ! 第一お兄さんだって話していたじゃなぃ!」

 

 

「俺はしょうがなく喋っていたからしょうがないんだよ!」

 

 

「うわー、すぐ男は言い訳する」

 


なんかさっきもおんなじような咎められ方をした気がする

 

 

そこから一進一退の罵りあいをした後

 


俺が丁度時間という概念を思い出したところで会話が止む

 


「あ、やば! じゃねお兄さん! ちゃんと猫さんのいう事聞くんだよ!」

 


そういって手を振りながら去っていくお姉さん

え、話の内容もしかして本当に聞こえていたのか?

 


もしかして彼女も猫と話すことができるのか・・・・・・あるいは彼女も頭がおかしいのか。それとも猫自体にその能力があったのか

 


まあいいや

 


遺言のように深く頭に刻まれた言の葉を思い出し部屋へと向かう俺

 


「あーあ、なんで俺、猫のいう事なんか真に受けてんだか」

 


それはきっと彼女の力もあるのであろう

 

イリ高校の制服を着た姉ちゃん

 

人生で初めてまともな女性と話せた気がする・・・・・・いやそうでもないか、

 


「いや、まとも?」

 


ガチリと鍵を開けて玄関に入る

 

猫は紙がどうのかって言っていたけどー

探し始めるけどリビングにはそれらしきものは全くない

 


もしかしてこれか?

 


台所のまな板に置いてあった

あいつテーブルの上にあるみたいなことを言ってたのにうそっぱちじゃねぇか

 


紙を取り上げるけど特に何も描いてない

 


「えぇ?」

 


やっぱ王道は燃やすだけど

猫はもっとけ、みたいなこといっていたからな

 


コンドームを財布に入れて運気アップよろしく

俺は拾った紙を財布の中に入れておく

 


「さてと」

 


これで約束? は果たせたけど、俺何かしようとしていた途中なんだよな

なんだっけ?

 


思い出そうとしながらふと棚の上の写真立てを見て、その隣の置時計が目に入る

 


「あぁ…...そうだ学校......」

 


もう完全に間に合わない

なぜイリ高校の姉ちゃんが急いだ時に俺も急がなかったのか

 


はぁ…

 

 

==========

 

 

バイト先にて。

 

 

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「イツハちゃんごめん!!」

 

「何事?」

 

 

「店長から聞いて、昨日殴られたって! どこ? ここ!? ごめんねぇ!」

 

 

あんまり体を触らないでほしい

 

傷ついた頬を触られる。

 

 

「いやいいですよ、別に死ななかったですし」

 

 

俺は目を逸らす、身体をやんわりと引く。

 

 

「うわぁあああん、優しいぃぃ!」

 

 

手を握られそうになったので知れっとよける俺。

 

「あんまり頬を撫でないでもらってもよろしいでしょうか」

 

 

「うぅう、本当にごめんね……どうしよう、今度ごはん奢るよぉ?」

 

 

小心した心が一瞬踊る。

想像しただけで恥ずかしい。

ギャルと二人でごはんなんて……

 

 

なんという贅沢。だが現実で行こうと思うと色々な苦難がある。

 

 

何着ていけばいいんだ。

どこのごはん屋だ。

牛丼とか指定したら怒るのかな。

 

 

「プレミアムエッグタルト一つで手を打ちますよ」

 

 

俺は逃げの一手。

 

 

「ふぇええ、そんなんでよければいくらでも出すよーー」

 

 

「まぁもとはと言えば天道さんのせいでもない訳ですし、天道さんだってただのとばっちりですし」

 

 

「ぅぅぅ、本当ありがとう」

 

 

 

明るいとは思っていたが。ここまで明るい子だったのか。