8 天宮・テルオ
「なぁなぁ! お前もボッチなんだろ?」
軽口いちばん、そんな失礼なやつだった。
普通は顔も知らない奴に対してその態度はたとい大学生であったとしてもない。
「ええ、まぁ」
その失礼な問いかけに対してのこのワタクシの返答。まさにボッチである。
「そっかぁ! マジで俺もぼっちでさぁ!」
赤髪に白のパーカー目立つダメージジーンズ。正直彼なら雰囲気的に友人や仲間もいそうなものだが。
俺に話しかけにきたのは冷やかしか何かか。
「なんの用ですか?」
「まぁまぁそう警戒しないでよ! 実は俺全然友達できなくてさぁ
彼の名前は天宮・テルオ。話を聞くと、どうやら彼はヤンキー上がりだからみんなノリが違くて人が離れていくそうだ。
「いや、僕もできれば関わりたくないんですが……」
「ひどい!そんなこと言うなよ〜もう話してくれる相手がいないんだよぉ」
ということは人通り全校生徒と話し終えた後なのだろうか。
一応関わりたくないとは言ったものの、彼から悪い気配は不思議と感じなかった。
「人が離れていくということはあなたに何か問題があるのではないのですか」
「ひどい! じゃぁ一回精査してみてよ! ね? いったん俺とつるもう!」
そのノリは完璧に悪友なのだが……「つるもう」とかもう今では死語だし。
とはいえろくに話したことのない人に対して偏見で距離を取るのもよろしくない。
「まぁ、一回だけなら」
「よし!決まり! 今日早速授業後遊びに行こうぜ!!」
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といって連れてこられたのが駅裏のちょっとぴっと治安の悪い繁華街。
「あぁ、おれんちここだけど寄っていく?」
「いや、怖いからいいです」
「人んちに向かって怖いとは失礼だな!」
「いやいや頭おかしいんか! 家族というか完璧に「ファミリー」じゃないですか」
「え? なんてぇ? ごめん、俺にあんまり横文字使わないでくれ」
この人よく虹ヶ丘入れたな。
連れてこられた場所が繁華街で、家と言われる場所がおおよそ麻薬の取引現場で使われるような建物。これのどこに不信感をもたないようにできるというのだろうか僕は悪くない。
「はぁ、普通の大学生はまず繁華街にそんな来ないし。来たとしても……その、お店とか一軒屋以外の施設にそんな入ろうとしないよ。人によりけど」
「ええええ、そうなのか!」
「うん」
なるほど、この人に友達ができない理由がわかったぞ。
結局その日は繁華街から離れ、近くの公園で砂遊びして終わった。
「意外と酒なくても楽しいもんだな!」
あの日、肩をぶつけられて以来、やたら人に話しかけられる。
余談なんだけど、今日繁華街の路地裏でヒカリさんみたいな人を見かけたのだが気のせいだろうか。男を二人ボコボコに殴っていたが、きっと気のせいだよな。