9 勇者・エリオット
「おい、そこのお前」
振り向くとそこには見るからに勇者の風態をした少年がいた。身長は150㎝と小柄で、寒くもないのに顔にターバンを巻いている。寒がりなのだろうか。
うわー絶対異世界系の人だ。なんか背中に剣まで背負っているし……捕まるぞ。
「はい」
「飯をくれ」
「はい」
甘えるなとかダメにするからとかそんなことはどうでもいい。俺はゆとりなんだ。争い事など万が一にもしやしない。
俺は持っていた食べさしのすき焼きおにぎりを渡す。
「では」
「おい待て」
カラマレタ……
「は、はあい」
話を聞いたところどうやら彼は異世界からきたとのこと。右も左もわからないからとりあえずこの世界のことを教えてほしいと言われた。
俺はめんどくさかったのでテルオに連絡して彼を案内するように頼んだ。
「困っている友人がいるから案内してくれない?」
テルオの返事は至極明るいものであった。
「んおあ、いいよ!!」
嘘だろ。普通もっと警戒しろよ。
「ありがとう」
「あぁいいぜ、友達だしな! そのかわり今度遊びにいこうぜー」
嗚呼、真っ当で真面目で大手を上げて喜ぶべき友人の言葉であるはずなのに俺はどうしてもそれを快く受け入れられなかった。そんな俺はクズか相当なコミュ障
「まぁ、行きましょう是非」
「よっしゃきまりぃ! あと、なんで丁寧語なんだよ! ため口でいいって言ったろ!」
「あと、彼について、バイト先ならしょうかいしますので、なにかあったらまた連絡してください」では。
「んぁあ、おい!」
その後来てくれたテルオに勇者を任せて俺はいそいそとバイトに出かけたのであった。