紅蓮のゆうび’s Diary

役に立つ、読みやすい、ように努めるただの日記。

16天羽綺羅々

 

丈量合切人同社。神社がオススメだ

 

 

北の天羽神社と調べろ。

 

 

 

俺は丁度閉まろうとした電車のドアをスレスレに出て今に至る。

 

 

動悸がする

 

冷や汗が止まらない

 

俺は走り抜ける

 

『クカカカ、この愚鈍の守護を持っていけ』

 

『なんだこれ、どんぐりじゃねぇか』

 

『クカカカ、これは大切なものだ。これがあれば天羽に入れる。前回と同様ならな』

 

『なんだそれ』

 

『ただし、これを持つことで霊に好かれる、せいぜい怪しい存在には気をつけることだ』

 

 

風を切って世界を置き去りにする。

 

驚かせて置いてきた女性はまだ電車の中にいるはずだ。

 

 

改札を電子マネーで通り過ぎた俺は全力で走って今、白神へと向かっている。

 

「悪いことしたなぁ」

 

罪悪感を湧かせるのは先ほどのトップお姉さん。霊的な何かだと踏んで俺は彼女を驚かせたは良いものの、その後人間味のある驚愕に俺もビックリして結局逃げてきてしまった。

 

要は『霊的な存在か』『人間か』を判断したかったので鎌をかけたのだが、結果が人間であったので申し訳ない気持ちが勝り、逃げてきたことになる。

 

だってあんな話で怖がるとは思わなかったし...

 

と言いつつ俺の右肩は震えているのだがね。ブルブル。

 

 

 

アキラが霊的な存在とか幽霊とか驚かすから...と彼のせいにしておく。

 

 

 

はぁ、はぁ...

 

 

前回と同様に神社の麓までくる。ここから先はただの廃墟であるのだが...

 

この謎の団栗さえあれば

 

 

先ほどまでなにもなかった茂みから石畳の階段が現れる。

 

いつ見ても奇妙

 

そこを15分ほどかけて登ると赤い鳥居が見えてくる。

 

 

「神社にきたのならちゃんと賽銭の一つでも投じていきなさいよマナーでしょう」

 

真夜中だと言うのに彼女は清く出迎えてくれる。

 

 

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「お久しぶりです」

 

「なにその言葉遣い、キモいんだけど」

 

「...御祓してもらっても良いですか?」

 

「...いいけどって、驚いた、あなた……いろんな要素を持ち過ぎよ」


例えるならば中華とフランスと世界中のバイキングよと例える彼女

 

「どこから取り除けばいいのよ...」


ちょっと何言ってんのかわからない


まぁいいわ、できるとこまではやってみるから

後は知らないわ、勝手になさい


そういって一旦社殿にもどっていき、布みたいなのを持って戻ってくる巫女さん

 


ご祈祷---------

 

 

「これは文布(あやぬの)と言ってあなたに憑いている悪いものを取る際に助けてくれるものよ。別名、倭文(しず)とも言うわ」

 

「へー」

 

「といっても本来の用途とは違うんだけどね。今回は肩にかけるだけ」

 

「違うんかい」

 

 

俺は土の上に座らされてあぐらをかく。

 

 


肩ポン

 

 

え?終わり

なわけないよな


これはあれだにきっと。立ちあがったらもっ回最初っからね!っていうイジワルなパターンだ


……


……


……


あなた...これ...取っちゃダメなものなのね...

 

「なんか言った?」

 

「......」


「へ? なぁおい、もういいかよ」


「...はぁー? とっくにいいわよー、早く立ち上がりなさい」

 

良いなら良いと言ってくれ

 

「さぁ、境内のお掃除、手伝ってもらうわよ」


俺は一旦考えてから


「えええ! 見返りを求めんのかよ!」

「そうよ? 神社だってビジネスだもの、慈善事業じゃないのよ」

「そりゃそうかもだけど」

「なんなら相場価格の十万円の方で手を打ちましょうか?」


本来は十万もかかるのか


「詐欺じゃん」

「はいはい、鷺(さぎ)でも鴇(とき)でもどちらでもいいわ。払えないならちゃっちゃとお掃除して下さいな」


半ば強引に箒を渡される

それも、あの魔女とかが使う竹でできたでっけぇやつ


「強制かよ!」

「いいじゃないの、あなたの不幸は払われましたー、っはい。掃除ぐらい安いもんよ」


唖然とする俺に、そして厄は祓ったんだからお金か境内どっちかはらっていきなさいと上手いことを言ってくる暴君巫女

 

「こんな辺鄙なところの掃除か」


「次言ったら私の手でぶっ殺す」

 

うはー怖い怖い

おまけに地耳かよ?


何も言っていないのに睨まれた

 

巫女が殺すとか言うなよな

 

 

==========

 

「お団子食べる?」

 

「急に優しいやん」

 

「いらないならいいわ」

 

「ください」

 

お裾分けのままに、賽銭箱の前に座る彼女からまっ白い団子を受け取る。

 

意外とみたらしとかより白玉系の団子の方が好き。

 

「隣、座らないの?」

 

「あぁあ、座る」

 

賽銭箱の前ってバチ当たらんのかな。

 

「濃い食べ物よりも、素朴な食べ物の方が好きなのよね」

 

「それめっちゃ...わかる」

 

団子を一口食べる。始め無味に近いが、後から奥深い甘みがゆっくりと口の中に広がっていく。

 

「美味しい」

 

「ええ。お茶も飲むかしら」

 

茶皿に乗った湯気湧き立つお茶をどこからか取り出すキララさん。お茶はほんのりとした優しい緑。

 

「何か企んでるんですか?」

 

「いらないなら私が飲むわ」

 

「いただきます」

 


掃除が終わったのはすっかり日が暮れているところだった


俺はちょっと張り切りすぎたと後悔する

あちゃー、これ駅に着いたらすっかり暗いぞ


「やっちまったなぁ」

「何がやっちまったなの?」


まさかこの人にお化けが怖いなんて言えるか


「いや、」

「お化け怖いの?」


なぜその話題がでてくる


「...」

「なんでわかったかって?」

「お、おい! 俺何も言っていないだろう!」

「わかるわよ」

「っへ?」

「だって私ーー


ーー人の心が読めるもの」

 

運動後に今日一番の風邪が吹く

汗かいた頬が撫でられてきもちぃ

 

「あんたみたいな人に本音を言えない人間には天敵ね」

 

背中に冷や汗再び

 

 

「......」

 


狐につままれた気分であった

 

 

 

俺今まで失礼なこと考えていなかったよね?