22 泉谷・ヒサネ
結局退院後、初日はバイトすることになった。天童さんには連絡していない。連絡先を持っていなかった。看護師には反対された。
はぁ...
肩の痛みはない。腹の開腸なんてはなっからなかったように脈打つ。
「失礼ですが『ノナメ(いつは)』さんですか?」
ノナメは俺のネットの名前
「は。はい。だれですか?」
そこにいたのは紛れもない女性俺に女性の知り合いは今んとこ天童さんとキララさんしかいない。
「友」
その単語は耳に馴染む。友とは俺が今日待ち合わせしている相手の疑似ネーム。
「あの...ネットの?」
それが本当だとしたらこの人に対して下ネタ言いすぎている。
「本名、久音」
嘘であってくれ。
「え? え? え?」
「僕がよく使うキャラはミント」
驚いた...
「驚いていないでいくず」
「お、お、おう」
まさか友が女性だとは
その日は虹ヶ丘遊園地でチケット配布のアルバイトをした。
遊園地の受付アルバイト
後半人形着せさせられた。クソ暑かった。
そして限定品のヌコヌコストラップを手に入れた。
いらね〜。
==========
気をつけると良いよ。最近殺人が増えているから。
「お前まで変なフラグ立てないでくれる?」
「フラグじゃない。イツハの近所で本当に多いんだ。あとお前じゃなくて『友』か『ヒサネ』」
「そうか」
「ねぇ。」
「え?」
「よそよそしくない?」
「いいえ」
「ほら、敬語なんか使っちゃってさ」
「え?」
「ネットでは使ってなかったじゃないか」
「そのね」
「今日ずっとそうじゃないかい?」
「えっと...」
「ノナメがこんな凡人だとは思わなかったよ」
ヒサネの雰囲気が変わる。
畳み掛けるねぇ...
「...」
「女性の風貌をしていたのがそんなにがっかりだった?」
ガチなやつやん。
「いいや...おどろいてね」
「なにが?」
「シュークリームの中身がアイスだった時の感覚」
とりあえずお茶を濁す。
「...僕は知覚過敏なんだ」
乗ってくるんかい。
「あぁ俺もだ」
「...」
「時折思う。人類にとって身体から毛がなくなったのは進化なのか退化なのか...」
とりあえず続けて変なことを言っておこう。
「それは、目的によって変わるよ」
俺のこの目的も、あるいは気づいてくれているのか。
「そうか、俺はどうありたいんだろうな」
「...」
「少なくとも今まで通りの方が、俺は楽だな」
「生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである」
「一時間の浪費をなんとも思わない人は、人生の価値をまだ発見してはいない」
「...気をつけてね」
「ありがとう」
とりあえず温度感下がったわ。
「どうせ機会ないだろうし、僕でオナニーしておく?」
「本当フランクだよなお前」
今日会ったばかりだというのになんだその態度は。
いや、いつもこういう会話をしていたはずなのだ。
「今日は泊まって行こう」
「すまん、明日は学校なんだ」
「そっか。じゃぁまた」
「おうサンクス」
という会話を最後に俺らは後にする。
全く、男だと思っていた旧友がまさかの女性だったとはな...色々寂しいな。なんか、俺の不順応も順応も。俺の心も感情も。あいつの苛立ちも。
なんかめっちゃゾンビの着ぐるみがだるそうにしてる。そりゃゾンビだからな。
「あのー、大丈夫ですか?」
「!」
ゾンビはこちに気づくと口に何か持っていくジェスチャーをした。
「水か」
自販機でお水を購入してゾンビに渡す
「ごきゅ、ごきゅ、ごきゅ」
「だぁーーぁーぁー」
なんなんだこいつ。