紅蓮のゆうび’s Diary

役に立つ、読みやすい、ように努めるただの日記。

13ネットの友人

 

ミアどうしてるかなーなんて思いながら玄関のドアを閉め鍵をかける

 

ちなみに今日の朝は、家に誰も来なかった

 

その思考性自体が異常あるいは妄想的だと言うのに......

 

確かに俺は真っ当な生き方をしてきたわけではないが、まさかここまで清純な道から外れるとは

 

ここまで妄想癖なのか、あるいはこの世界がおかしいのか

 

右の部屋の玄関が開かれる

 

その日俺は久しぶりにとなりの部屋のお隣さんに出会う、お昼なのに珍しい

 

「あ、おはようございます...」

 

軽く一暼される。あれ、なんか冷たい?

今日も今日とて扇情的な黒いスーツな格好をされている彼女。なんの仕事かは知らない

 

ちなみにあの冷たい目は後期の始めあたりに女の子が落としたハンカチを拾って渡した時の反応を思い出す

 

「女の子を外に、それもあんな格好で待たすのは……どうかと思う」

 

そう言って去って行く

なにを言われたのかわからずお隣さんを見送る俺

 

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目の前を通過していき階段を下りていく

 

「え?」

 

なんの話だ?

あl

昨日のもしかして見られているのか

あちゃーー

 

俺は天を仰ぐ

 

「あれは僕の……」

 

彼女でも友人でもなんでもない……といったら悲しいか

彼女はいったいなんなんだろうか

そしてなんだったんだろうかあれは

そして俺はお隣さんになんて言い訳すればいいんだ

 

いやまさかあの恰好を見られたんじゃないよな?

だとしたら完全に夜にイイコトしてくれるお姉さんを呼ばれたと思われるよっ

 

ちょっと恥ずかしい

別にいいんだけど

 

でも女の子をほったらかしにするような人間だとは思われたくないよね

まぁあの蔑むような目で見られた後、あの方を追いかける勇気なんて俺にはないんだけど

 

 

 

 

 

==========

 

 

 

 

学校に行ったらアキラがキャンパスのベンチで黄昏ていた

 

キザな奴め

 

大学はちょっとした丘の上にある

どうでもいい話だが、もともとここら辺には本来丘しかなく、物好きな人が何もないのに大学だけを建てたらしい。ビジネスとしてはとんでもない。そしたら次第に町が形成されていって、ここら一帯に人が集まったと言われている。とんだ運の持ち主である。だから名前も伊里が丘の名を冠したイリ大学と呼ばれている

 

キャンパスの真ん中は他の大学と同じように中庭があり、さらにそこにはいくつかベンチが設置してある

 

そこの一つにアイツはいた

イケメンだから様になるところがまたハラタツ

歩み寄り声をかける

 

「よぉキザやろう」

「ん、お前か...」

 

アキラとの馴れ初めは全く覚えていない

よくわからないけど気づけば知りあっていた

これは別に俺が記憶力悪いわけではない

 

実際ミノルとの出会いは覚えている訳だし

いや、あれはあれで印象に残るファーストだったからなんともいえない

 

「吸血鬼って、知ってる?」

 

単刀直入に聞く

 

「あぁ」

 

帰ってきたのは肯定

 

「それってこの町にもいる?」

「目撃情報は何個か寄せられているが……」

 

アキラはッフと鼻で笑う

なんだよ

 

「まさか貴様がその手の話を信じるとはね」

「いやその件についてはごめんなさいだよ」

 

先日まで全く信じていなかったのに急に手のひら返ししてくる俺を、きっと笑うに違いない

しょうがないといったらそれまでだが、俺もアレだけの経験をしておけば信じざるを得ない

 

「クハっ、まぁいい……特に害はないと言われている、出会っても襲われるわけではなく、少し血を欲してくるくらいの些細な要求だ」

 

間違いなくアイツである

 

「本当に害はないのか?」

「目撃情報が少なくてな、よう調査中だ」

「そうか……」

 

彼の眉毛が上がる

 

「出会ったことでもあるのか?」

 

めんどくさいから嘘をついておく

 

「いいや」

「……そうか」

「あと悪いんだけどよ、魔女っ娘が急に家に現れた件とか、クローゼットから痴女が現れる噂とかあったりする?」

 

アキラはそんな突拍子もない俺の質問にもしっかり答えてくれる

 

「魔女っ娘はないな……痴女の件なら似たようなのが一つ」

「本当か! どんな?」

「箪笥から騎士が現れたという噂ならある」

 

箪笥から騎士……?

 

「それほんとうなのか」

 

これを呟いたらめっちゃ嫌な顔された

「あ、ごめんごめん」と謝っておく

アキラは信用されないことがなによりも嫌いなのだ

 

それにもとはといえば俺から聞いておいて信用しないというのは友人として失礼すぎる

 

友人ではないかもしれないが

 

「まあ確かに箪笥から騎士は目撃情報が一件しかないからな……情報としては少し甘い」

 

そんなもんかと俺は納得する

 

「あと俺お祓いしてもらいたいんだけど、オススメのお祓い所知ってたりする?」

「丈量合切人同社の神社がオススメだ」

「ごめん、もういっかい言ってもらっていい?」

 

俺は携帯を取り出す

 

「北の天羽神社と呼ばれている。調べても出てこない。あとで詳細を送ろう」

 

最初っからそう言ってよ...

 

「北の天羽神社ね……ありがとう」

 

携帯をポケットにしまう

 

「そこの巫女は少々難ありでな、まぁあまり叱咤しないよう頼むよ」

 

「なんじゃそりゃ」

 

「それと」

 

まだあるのかよ

 

「辻斬り……はどうでもいいな、最近駅前商店街の方で幽霊が出るそうだ」

「へぇ……幽霊」

 

その前振りみたいのを立てられたことで、俺は少しだけアキラを恨めしく思った

 

「面白いのが、その幽霊の名前がレイというらしい」

 

「……」

 

言い終えるとアキラは嬉しそうにクカカカカと静かに笑い始める

とりあえず俺も「あははは」と言っておくが、いったいどこら辺が面白かったのだろうか

 

「ともあれ丈量合切人同社にいくなら頼みたいことがある」

 

「あー、いつもみたいな無茶ぶりは勘弁してねぇ」

 

「なに簡単だ、――」

 

アキラは人差し指を何回か額に当てて思考の意を見せると。たっぷりと間を持って俺へと告げる

 

「その神社にある松毬(まつぼっくり)五つと松の針を八本頼む」

 

いつも俺はこのタイミングで「そんなもん何に使うんだよ」と聞いていたが、それに対する返事が一度でも帰ってきたことが無いので今回は割愛させていただく。

 

この前の団栗(どんぐり)と言い、今回の松毬と言い、ほんと変わった要求をするものだ。

 

「それが今回の情報の報酬ということでいいですかね?」

 

「ああ……問題ないとも、だが今日中に頼もうか」

 

「えぇぇー、今日中?」

 

「ふむ……ふふくか?」

 

「明日じゃダメなん?」

 

「明日は赤口だ……」

 

「なんだそれ、いいよ別に」

 

「可能なら十一時から一時の間に行動しておくといい」

 

「……いや、授業だし」

 

彼はまたクカカと笑うと

 

「そうか、まあ己が道は己で示せ。明日でいい……頼んだぞ」

 

「ちなみに松ぼっくりとかはその神社のやつじゃないといけないんだよな」

 

「もちろん」

 

彼は意味深に俺の右手をチラリと見た、その後まるで興味がなくなったように人間観察を再開させるアキラ

 

俺はたまにお前が異界人なんじゃないかって思うときがあるよ

 

情報の代わりの等価交換。こんなんで俺の自己中はきんこうは保たれる。

 

ともあれこちらも用はもうない

踵をかえしてミノルが受けている教室の方へ向かおうとすると、彼はもう授業が終わったあとだったのか外へ出ていた

 

気づいてくれたようで小さく手を上げ意思表示をしてくる

 

俺も軽く手をあげて答える

 

顔が見えてくる距離になるとミノルの表情がうかがえるように……

 

「なんかあったのか?」

 

彼のその顔は不機嫌そうだった

 

またあの人と会っていたの?

あ? まぁね

やめなよもう

いや、そんなに付き合わないと思うよ

そう? ……ならいいけど

 

行けるならお祓いに行こうと思っていたけど

 

なんだか嫌な予感がして18:00くらいに帰る

別に暗くなるのが怖かったとかではない

 

今から神社へ行こうとすると帰りが大分遅くなる

 

アキラが送ってくれた住所の詳細を見たらなんと

天羽の社、片道3時間もかかるのだ

 

明日の学校終わってからいけば16:00か……

 

 

 

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ネットの友人からダイレクトメッセージがきた

バイトをしないかと

 

信じていない訳ではないが、昔からのなじみとはいえ彼には前科がある。心して望まなければならないだろう。